21アンタレスDC シャロー化大作戦
インダクトローターレスにした21アンタレスDCスプール。こちらはライトリグ用にしようということで、よりシャローにすることを目的に作業してみました。
正直、アンタレスDCは夢屋シャロースプール化の方向性ならできないことはないわけで、メーカーが率先してやって欲しいなあなんて思うわけですけども。
(ただし糸巻き面裏側で固定しているインダクトローターを固定する足が必要になり、また、シャロー化するわけですからスプール本体は多少重くなります。これはメタニウムシャローでも起きてますが、ようは「糸の重量が減る分>全体増加」であればメリットはあるわけです。その辺理解してないユーザとのせめぎ合いはありそう。)
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【結論】23.7g→22.5gにダイエット成功!
結果からしますと、インダクトローターレスカスタムスプールにシャローチューンを施すことで、PE2号90m+25lbナイロンリーダーを3ひろ確保、ちゃんとスプールいっぱいから糸が出る状態で…
23.7g→22.5gに軽量化しました!
(ノーマルスプールだと24.8g→23.6gです)
※但し完全比較ではなく同様比較です
今回はそんな作業記録とまつわる話となります。
21アンタレスDCの標準セッティング
Spider’s Fishing Blogさんの記事によりますと、21アンタレスDCの標準スプールは約16.89g、1.5号のPEを200mを巻いて24.66g、その差7.8gとのことです。
PE1.5号で210mほどがスペック上フル巻きのスプールですから、あと10m巻いて0.39gで約25g。
ちなみにうちにあるPE3号+リーダーでスプールが抜けるキワくらいで巻いたスプールも24.8gでした。
つまり、アンタレスDCのノーマルスプールは推奨糸巻き量(20lb-80m)分のPEをフルまでまくと25g前後。スプール重量のおおむね30%がPEの重さということです。
慣性モーメントを低減させるのに、外側重さが増していく糸の重さを減らす事はとても重要ということになります。ただし、21アンタレスのもつ大径スプールのよさは殺さないよう、シャロー化にしないといけません。
必要な糸巻き量を確保し、スプール径を犠牲にする事なく、僅かでも重量を減らす。それが今回のミッションです。
糸の重さと慣性モーメント、という話
使いやすくよく飛びトラブルの少ない実用性の高いベイトリールには、ベアリング・オイルのセッティングもさることながら、軽い力で回り、必要なくなれば余分な回転をしない、つまりオーバーランを起こしにくい、慣性力の小さいスプールが必要だと考えています。
慣性力はスプールのシステム重量の影響を受けます。
スプールのシステム重量とは「スプールと糸を合わせた重さ」ということですが、注意する点はスプール本体だけではなく「糸の重さ」というのが重要でもあります。
スプールのシステム重量が軽ければ、軽いブレーキで減速します。元々ブレーキを弱くしても問題ないなら、ブレーキ強くすることでトラブルレス性をより引き上げる選択肢があるわけです。
スプールと慣性力について、難しい話に関してはLurecafeさんの記事がめちゃくちゃすごいのでこちらをどうぞ。DeepSTREAMさんの記事もなかなかすばらしいです。
糸の重さは概ね量と比重で決まります。
例えばPEは0.98、ナイロンは1.14、フロロは1.78くらいと言われています。(長さ太さは考えず)スプールいっぱいまで巻くとフロロはPEの1.8倍の重さをもつ、といっていいわけですね。
スプールパンパンまで巻くというのであれば、概ねこの比重に近い重さの違いが出てくる、というわけです。
※ちなみにPEの重さは規格ベースで考えるとPE1.5号が300デニール(1号200デニール)、標準規格上300デニールは9000mあたり300gなので6.67g。もちろん素材・編み方・コーティングなどで差がでますし、水に浸けると編んだ糸の間に水を含むのですこーしばかり重くなるはずです。
基本的にやれることは底上げしかない
シャロースプール化は「シャロースプールを買う」か「底上げする」かのどちらかです。
21アンタレスであれば下町スプールを買うのが理想ではありますが、いかんせん4万円です。その4万円でリール買った方が良くない?みたいな気持ちになるのも人の常です。ただ、ハッキリと軽くシャローにできるのでその費用としては高くないという考え方もあります。
ナイロンやフロロなら「PEで下巻きする(なんなら超ロングリーダーでさらに削る)」方法が使えますが、使うラインはPEですから、それより軽くしないといけません。
結果、やれるのは「コルクエコノマイザー」になります。定番はコルクテープを巻き付けるか、パイプ状にくりぬいて割って被せるチューンで、今回はこちらのコルクテープを使いました。
釣りでお馴染みの東邦産業のコルクテープ。
バットに巻いたりしてバットグリップにしてみたり、セパレートグリップのカバーにするなどの用途向けのため、曲げに強いのが特徴です。ちなみにダイソーのコルクボード使うのもありましたが、元々曲面加工のために作られたもののほうが圧倒的に使いやすいので、こちらをオススメします。
厚み1mm、幅20mm、長さ1.5mあり、アンタレスDCの19mm幅にちょうど良く、厚みも1mmでコントロールしやすく、曲面にもしっかりとフィットします。作業性も良好でした。
円周から逆算して、1巻で2台分、失敗があっても十分呼びがとれるくらいは使えそうです。
作業手順
- 貼り付け面の直径+1mmの円周+20mmくらいでカット。作業性を考えて少し多めがいいです。
- 貼り付け場所のスプール幅と合わせて定規とカッターでカットし、幅がぴっちりになったら裏紙を剥がして端を沿わすように貼り、最後に結合部がぴったりなるように長さをカットして貼り付ける。
基本的にはこれだけです。
必ず1回転事、巻き付けで完結で巻き付けるようにしてください。グルグル巻くと段差ができますので、必ず巻いた上に次の一周と増やしてください。
スプールは鉢型
スプールの溝は基本的には軸に向かって幅が狭くなる鉢型です。なので、貼り付けると左右が盛り上がり中心が凹みます。
ざっくり測定
スプール(糸巻き面の外側・全体) 直径φ36.6mm(くらい)
スプール斜めカット部 直径φ35mm(くらい)
スプール斜めカット部内側・糸巻き面最上部 幅 18.7mm(くらい)
スプール(糸巻き面)中心部φ20mm〜外周部φ21mm前後
1枚あたりφ2mm増えるので外周部〜斜めカット部までで7.5mmといったところということになりますね。
幅については、外周は18.7mmに近いですが、斜めに狭まり軸に近いほうは17mm近くまで絞られています。実際に貼る場合には真ん中はさらに凹んでいるため、それに沿った状態で端がぴったり収まるよう様子を見ながら作業してください。
一番最後の2枚くらいがピチっと端とフィットしていれば糸落ちはしませんから、下になるところはジャスピタじゃなくても特に問題ないです。もし巻き始めと巻き終わりの間で少し隙間が空いてしまったら、適当に端材をカットして埋めておきましょう。
どのくらいかさ上げすればよいのか
本当は巻きたい糸量から逆算すべきなのですが…。
正直、それを出す計算力がないので「すり鉢型で減っていく部分を減らしたときの体積」がマトモに出せていません。
ただ、予想ラインとしては深さの50%(3.5mm)を超えても糸巻き量の減少は半分にならない、はず。単純に、内周と外周の円周の差に加え、内周ほど幅が狭くなるからです。
最も内周にあたるあたりでφ20〜21、円周が64mm程度です。もっとも巻かれている状態をφ35〜36だとして円周110mm程度ですから、1.7倍くらい円周に差があり、さらに幅が10%ほど違うため、天地では実質的には1.9倍程度の差があることになります。
ですから、溝の半分埋めたところで残り糸巻き量:底上げが「2:1」くらいの量になる…はず。
入れられる枚数はパンパンになる8枚分の手前の7枚。PE2号160mなのでフル容量の8枚の半分となる4枚では110m以上は入ってしまうはず。PE2号を90mなら最低でも5枚は入れていいはずという目論見。
でも4枚でチェック。
120mをやや超えそうので糸を戻し、5枚巻いたとき(おおよそ5mm底上げ)でPE2号が160m→100mでぴっちり。ただしこれでリーダーを繋ぐとリールから抜けなくなる量でしたので、実釣性を考えて90mに3ヒロの25lbリーダーを巻いてちょうどいい感じにしました。
ということで、21アンタレスDCのノーマルスプールをコルクテープでかさ上げする場合、ラインキャパシティを考えて、4〜5枚巻くのがちょうどいいのかなと思います。もう少し細糸を使う、もしくはスペーサーシステムを組むなら6枚でいいですね。
PEラインの太さがわりとマチマチであること、コルクは若干凹むこと、厚みが正確に1mmではないことで糸巻き量に差はでるかと思いますが「え、こんなにシャローにしちゃうの」くらいの厚みを重ねても、案外糸巻き量は減ってないんですよね。不思議な物です。
実際の重さはどれくらいになったか
こういうときに先につける前を撮っておかないというのがアカンな!って思うところです。
【結果】カスタム+エコノマイザー 22.5g
インダクトローターレススプールPE2号90m+25lbナイロン3ヒロ+コルクエコノマイザー5mm
【参考】ノーマルスプール 24.8g
ノーマルスプール、スペーサーPE3号で確か150mに下巻きPEでツラ合わせ。それにナイロン50lbリーダー3ヒロ
どちらもスプールが交換できる分量でぴっちり程度にセッティングしています。ノーマルスプールはPEを巻いている限り、Spider’s Fishing Blogさんのスプールの24.66gと近いところでおさまるという感じですね。
数値を見れば結果はちゃんと出てる
スプール重量約16.9gにフル巻きで24.8gと仮定。つまりPEラインの重さは7.9g。
インダクトローター1.1gを差し引いたカスタムスプール重量は15.8g。22.5gからスプール重量を差し引いて6.7g。これが糸の重さとなります。この糸の量をノーマルスプールでかさ上げを行った場合、23.6gと推測されます。
PE2号160mキャパシティのスプールですから、フル巻きのラインのうち70mのラインがコルクが差し替わったと仮定して長さの比率43.7%、重量にして3.3gが2.1gに差分1.2gほどを産みだした事になります。
コルク自体の比重は0.2とかなのでもっと下がるはず…なのですが、恐らく接着テープの部分の重さやが意外と効いてくるのかなという感じはします。
しっかり設計されたスプールは偉い
結局、設計段階から「それ」に作られたカスタムスプール、下町スプールなどに比べれば圧倒的に重量が残ってしまいます。結局は「本体にできるだけ不可逆な加工をせず、後付けでいじる限界」がありますよね。
とはいえ、やや内側よりに僅か1gとはいえ、スプール径を活かしたまま慣性を下げる事に成功したのは、必ずメリットとしてあるかなと思います。
ノーマルスプールのままでも効果はありますので毎回いっぱいいっぱい下巻きしている方はコルクチューンおすすめです。今お持ちの方はスペアスプールとセットでやってみるといいかもしれないですよ。
ということで、作業メモみたいなものですが、誰かのお役に立てば幸いです。
余談:超ロングリーダーのススメ
ベイトリールのスプールの慣性力は基本的には少ないほうがタックルとしては使いやすい。でもラインの性質、例えばフロロを使う人はその比重の大きさから生まれる部分も重要ですよね。
ベイトリールは「使用感そのままに近くなる超ロングリーダーが扱えて、スプールの糸が軽くなる恩恵があるから」という利点もあります。リーダーが10mを超えていくと操作感はリーダーのラインの特性のほうに近寄るという話もあります。なので、超ロングリーダーの有効性はあります。
例えば、だいたい40mのレンジまでを攻めるとして、ルアーの操作にちょうどいいのがフロロ 12lb(線径0.285)だとしましょう。そこでフロロ60m入れるよりもフロロ 12lb 20m+PE1.5号 40m(約30lb・線径0.21)にすれば、ほぼ使用感を変えず、スプール内の糸の重量を減らせるということになります。
もし糸巻き面も元に揃えたいのであればより多くのPEを入れる形にはなりますが、その場合はシマノの糸巻き量計算機を使うとよいかなと思います。