フルセラミックベアリングを買ってみた話

写真はありま…せん…(とるのわすれた)

先日メンテナンスしていましたら、どうも連日釣行の日の浸水もあって、アンタレスDCに使っていたキャリルのダブルボールベアリングのうち、メカニカルブレーキ側が錆びてしまっていました。

湾奥は汽水よりは濃い、河川流入の海水のエリアなのでしょうがないのですが、値段が高いだけにちょっとダメージが気持ちに…。

ただ、ここのベアリングは浸水しやすいという情報はとれたので、ここについて防錆性の高いキャストップでダブルボールベアリングをつくるか、いっそフルセラミックベアリングにするかで悩みました。

そんな所から始まった話です。

フルセラミックベアリングとは

いくつか種類はありますが、ハウジング(内輪外輪)とボールがセラミック素材で作られたベアリング(保持具については樹脂製のものが多いよう)で、ようは「錆びる場所で使うために錆びない素材で作られたベアリング」です。素材としてはほぼジルコニアか窒化ケイ素の二種類。

また、キャリルのダブルボールベアリングの他、セラミックベアリングといってもハウジングがステンレス製のものもありますが、こちらは内輪外輪はステンレス製。

キャストップの素材のような防錆性能の極めて強いステンレスならいいのですが、そうでもない普通のステンレスだと結構さびますからね…。

ちなみに、13fishingというアメリカのメーカーは「CZBベアリング」というのを出してます。こちらはおそらくスーパーエンジニアリングプラスチックのような硬質な樹脂でより強い自己潤滑機能があるもの、摺動性グレードのものかなと思うのですが、ようはすべすべ樹脂ブッシュのスーパーなやつみたいなもんですね。ブッシュでありながら一般的なベアリングに引けを取らないくらいの性能がある、という感じで、使ってる人からするとなかなかのシロモノのようです。

買おうと思えばTackleware houseさんで買えるので興味がある方は是非。単価10ドルくらいです。

フルセラミックベアリングの特徴とメリット

錆びない

メリットはなんといっても「錆びない」事です。錆びる素材を使っていないので錆びません。

そのため、水の侵入の多い箇所での利用については圧倒的にメリットがあります。

潤滑オイルが基本的には不要

ステンレス素材と違い熱に強く、オイル塗布による防錆処理が不要なため、オイルレスで回転させても基本的には問題は起きません。

オイルは不要ですが、オイルを入れることによってオイルそのものがクッション材となる事から、多少入れることのメリットもあります(錆びると困るが、回転しすぎないほうがいい大口径かつ重いモノを投げるリールなど)

回転性能が比較的高い

ステンレスボールよりもより表面がスムーズなため、これは基本的にはドライもしくはそれに近い運用ができるからという点かなと思いますが、回転性能はステンレスボールより基本的には上になります。

磁化しない

ダイワのマグブレーキはそのリング状のマグの中心にスプールベアリングが挿入されますが、その磁力によってベアリングは磁力の影響を受けているのではないか、ボールとハウジングが「マグブレーキ」と同じ効果を産みだしてしまうのではないか、思われる節があります。

マグブレーキでブレーキが抜けきらない理由の一つかなとも思われますが、それを回避することでスプールの回転をよりナチュラルにする効果が期待できます。

素材が軽い

ステンレスよりも比重が軽いので同じ構造なら少〜し軽いはずです。ジルコニアセラミックで比重6、ステンレスが8弱、窒化ケイ素の場合3.3なので、ジルコニアで20%、もし窒化ケイ素ならステンレスの概ね半分くらいと思っていいかと思います。

重量の影響を受けるのはシャフトに触れる内輪とボール部分だけになるかと思いますが、フィネススプールだとその小さな影響も変化に繋がるかなーなんて思ったりはします。

セラミックベアリングのデメリット

音がうるさい

おそらく最大のデメリットがこれです。回転するとき…つまり、ベイトリールであればキャストするとき、巻き取るとき、どちらでも「ジャーーーーーーーーー」といった、そろばんを転がしている時のような音が発生します。

これはおそらくセラミックが「硬い」事と、ミクロン単位での誤差の隙間によって、ボールとハウジングがカチカチとぶつかってる音が吸収されず、むしろ反響してしまうことから出ているのかなと思います。

割れる

リール用途で割れるということはあまりないと思いますが、基本的に弾性を持たないので、性質的には割れます。

手に入るものの寸法公差が割とある?

ボール自体の真円性は高いみたいなんですが、一方で買えるグレードだとやや寸法誤差が大きいのか、おそらくボールと保持具・内外輪のガタがやや大きい、小さい球が入っている可能性があるなぁというのは感じました。

2つのベアリングでも結構ノイズが違いますね。このあたりはほどほどの粘性のオイル入れた方がいい理由の一つにはなるかもしれません。

高く、入手性はイマイチ

ハッキリ言うと高いですね。フルセラミックかつケイ素という最強フルセラのAnyさんの「FX」は3000円、香川塩ビ工業さんのフルセラで1400円。こちらはAliexpressで購入しても恐らく同じかなーと思いますが、それでも800円前後ですから、防錆ベアリングのキャストップより高いということになりますね。

例えばAnyさんのFXなら、アンタレスDCの1030zzを一月に一度交換、ミネベアの一番安いベアリングをギリギリのオイルで使って使い捨てるにしても、10回は交換できる、キャストップで6回は費用と同等ことになります。

逆に錆びて駄目になると言うことはないですし、潮ガミが起きても60度くらいのお湯につけおきとかできるわけですから塩抜きもしやすい。当然それでも錆びない。と考えると、FXのコスパがいい…とも言えるのかな…どうだろ…?

ただ、音の事に目をつぶれば、AnyさんのFXは理論的にはおそらくベイトフィネス最高のベアリングのはずです。

フルセラミックベアリングの購入

とりあえず、錆びてしまった1030ベアリングの対処として手早く買いたかったので、AnyさんのFXと悩みましたがコストを考えて香川塩ビ工業さんのフルセラを買いました。

導入インプレッション:アンタレスDC編

ベースのベアリングセッティングは、21アンタレスDC:DC側キャリル・ダブルボールベアリング、メカニカル側標準ベアリングとなります。

音について

まず、一応クリーナーでクリーニングして試しにベアリングチェッカーで弾く…

うるさい…まあでも良く回る…。

1滴だけフッ素オイルを入れると、普通のベアリング同様、僅かなカウントで止まってしまいますが、音はだいぶ下がります。オイルがクッションになる感じですね。

オイルレスで使う方が性能的には出ますが、ベイトリールの場合、過剰回転があってもブレーキの餌であり、ブレーキが抜けた後のオーバーランのエネルギーですから、案外ちょうど良いかもしれません。

アンタレスDCのメカニカル・DCの両端のベアリングを両方入れ替えてみました。

スプールの指はじきテストをしてみたところ、「ちょっと音の不快感が強すぎる」と感じました。二つの音源があり混じって別の音を出すので、音量もさることながら音質が不快な感じ。

ただ、DCと同じで「回転数によって音質が変わる」ので、実は慣れるとキャスト時の情報が増えるのかななんて事も思いました。

とはいえ、さすがに厳しいので、浸水のすくないDC側はキャリルのダブルボールベアリングに戻して、メカニカル側のみ、フルセラミックにしてみました。

すると、まだ音はありますが、まあギリギリ許容範囲といったところ。キャリルはフィネスオイルを1滴垂らすだけでも圧倒的に静かですね。そして慣性があればしっかり回る。

しかし、アンタレスの巻き上げのヌルヌル感と音がかなりミスマッチしていますね。

レベルワインダーがうるさめなのと、一定のテンポでベアリングも鳴るのでそこまで違和感はないんですが、ヌルヌル巻き上げるのに音はジージー、しかし回転は滑らかでハンドルはめちゃスムーズ。

音の変化と感覚のミスマッチが凄いw

回転について

指はじき方式で同じスプールでためしたところ、元のセッティングだと何度か繰り返しても概ね13〜4カウント程度でストップ、交換後は13カウントほどで回転はだいぶ緩くなりますが、慣性で回り続ける時間がのびて〜20カウント弱といったところ。

純正ベアリングよりは回転性能が確保できているので、おそらくダブルボールベアリングに可能だった7g〜のキャストも問題ないでしょう。

回転性能については求めてる通りになりました。

導入インプレッション:Tatula 300 TW編

1つあまったのでTatula 300 TWのマグブレーキがついているサイドカップのベアリング(こちらも1030)を交換してみました。

オイルはCKM-002を3滴ほど。元々ヘビールアー用かつ固定マグですからスプールは回転しすぎると逆に扱いにくいリールなので、もったり目のオイルでほどよくピーク回転の性能は落とし、潤滑は維持するほうがいいのかなと。

音についてはアンタレスと同じですが、回転については9カウント程度から12カウント程度まで伸びました。

元が標準ベアリングだったというのもありますが、やはりベアリングが磁力の影響を受けてるのかなぁ…という印象ですが、このあたりはむしろ実際にキャストしてみて違いを感じられるか、というところですね。

ただ、Tatula 300は大きなスプールで慣性が強く、重いモノを投げる関係上、余り軽快に回りすぎてくれてもブレーキを強めるだけなので善し悪しはなやましいですね。

少し軽いところのキャパシティが広がりったかなと思います。

ちょっと面白そうなモノを見つけた

AliexpressでPEEK樹脂のハウジングを使ったベアリングを見つけたんですね。サイズ展開はリール用として使えるのは1030くらいなのですが、丁度セールで安かったので買ってみました。日本でもありますがコンシューマ向けはなさそう

PEEK樹脂とは

「Poly Ether Ether Ketone(ポリエーテルエーテルケトン)」という名前のようですが、いわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックというやつで、非常に硬い樹脂です。

ナガセプラスチック「エンプラ、スーパーエンプラの基礎知識」

ざっくり言うと非金属装置での利用、アルミのギアなどの代用にもできるくらいの素材のようです。

これのメリットはというと、加工工具の破損を気にしないといけない程度には十分な硬度がある上に比重が1.3とめちゃくちゃ軽いという点ですね。フロロカーボンより軽い。

窒化ケイ素でも3.3、ジルコニアで6、ステンレスで8前後ですから、ハウジング部分の重量はステンレス製の1/6程度となるはずです。おそらく0.5g台

ベアリングの内輪と玉の重さは回転に影響を与えるはずですので、ステンレス・フルセラミック(ジルコニア)よりは確実に良くなるはずですね。理想は窒化ケイ素+PEEKハウジングになるのでしょうけど

欠点は「原材料がクソたけぇ」って事で、150mm×245mm 2mm厚の板が24000円とかで売ってますしね。

さて、これに何を期待しているか、というとハウジングとボールの材質が違うコトで、音質が変わるんじゃないかなーという所です。

とりあえず到着したら改めて!