スプールの回転性能とバックラッシュを考える
みんな大好きバックラッシュ。
バックラッシュ、してますか。(長嶋顔)
リールメンテナンスの油脂関連のネタを書いていて、そういやこのへんあわせて書こうかなと思っていたネタが長すぎたので記事を分けます。
結論からいうと「スプール、ぎゅんぎゅん回ればいいってわけじゃないよね」って事なんですが、それをバックラッシュから考えてみようという話です。
あってるかどうかはしらないよ!
バックラッシュの仕組み
キャスト時の動作はこうなっているかと思います。
- キャストすると、ルアーは結ばれた糸を引っ張って飛んでいこうとします。
- その時、最初は「スプールが回転していない」状態ですから、スプールに回転力を与えながら(ルアーはその推進力を削りながら)飛んでいきます。
- スプールには回転しはじめたスプールは慣性によって回り続けるという性質があります。
- それにより、スプールはその自らの回転で巻かれている糸を緩め、ルアーはより軽い力で糸を引き出す(推進力の消費を温存する)ことができます。
- ルアーがその推進力を使い切ると着水します。
その中で、バックラッシュが起きる様々なシチュエーションはありますが、原理としてはこう考えてます。
(なお、スプールに巻き取られている段階での糸がみなどのトラブルがないものとします)
「スプールの回転によって発生する”ノーテンションで引き出せる糸”の放出量(回転によって緩む糸の量)(以後A) ー 引出量(ルアーが飛行する事によって引っ張り出される糸の量)(以後B)」
(※よく押し出すと表現されますが、スプールは”押し出して”はいないので、緩むと表現します。)
- このAーBの差分がプラス(A>B)の場合、その場には緩んだだけで引き出されない糸が増えていく状態になります。
- このAーBの差分がマイナス(A<B)の場合、足りない分をスプールから引き出す力が必要です。
原理的にバックラッシュが発生するのは1.の状態です。
きっかけに様々な理由はありますが、バックラッシュを生み出すのはスプールのオーバーランであり、「それによって緩み続け、行き場を失ったノーテンションの糸が、レベルワインダーに向かった糸ともつれ、絡んでしまう事」が、基本的なバックラッシュの仕組みだと考えられます。
ただし、A>Bなら必ずバックラッシュするわけではなく、緩んだ糸が引き出される糸に絡む前に、適切なブレーキが掛け(か)ることによりA<Bとなりますので、バックラッシュに至らずに戻ることもあります。(ブレーキを掛けても絡むことはあります)
つまり、キャストが安定した状態は2の状態であり、かつ、最適なのはその量が釣り合っているか極めて小さなマイナス(A≦B)の場合になります。
一方で、この差引のマイナス幅が大きすぎる2.の場合(A≪B)、その状況は「ノーテンションで引っ張り出せる糸の在庫がゼロの状態」つまり糸を得るためにスプールを回さねばならず、そのスプールの回転をルアーの推進力、運動エネルギーから得ている事になります。
そうなると当然、ルアーは失速していくので飛距離がでない事になります。
理想的なキャストとそれに向けて必要な事とは
とすると、理想的なキャスト、よりスムーズにバックラッシュなく(ロング)キャストするためには…
回転するスプールが緩ませた糸の放出とその引出量が釣り合ってスプール周辺に糸が残る事なく、しかし、飛距離のためのエネルギーをスプールの回転のためにできるだけ使わず糸を放出させるためのスプールの回転(慣性によるスプールの回転)は長く維持させるために、適切なブレーキコントロールをしないといけない。
ということになります。
ベイトリール諦めたくなる瞬間がこれですね。スピニングはこの部分に圧倒的な優位があります。
ここで一番考えないといけないなーと思うのは、「適切なブレーキコントロール」のところ。
先に述べたとおり、基本的にはスプールのオーバーランがバックラッシュの主な要因です。
スプールの回転に抵抗をかけ回転を制御をしないと、バックラッシュを回避し、安定したキャストに繋がらないから、わざわざリール本体の機構として外部ブレーキを搭載し、サミングという技術があるわけです。
一方で、スプールの回転抵抗は「ないほうがいいもの」として扱われがちだと思います。
例えば「ベアリング交換して1分スプールが回り続けた!」そんな動画よくありますよね。
本当にそれは多くの人が安定したキャストと繋がる、汎用性のあるチューニングであり、コストをかけるべき「メリット」なんだろうか?というのが今回の本題でもあります。
回転性能のベストはケースバイケース
ここからはほぼ運用ポリシーの話なので、スプールそのものはできるだけゼロ!それ以外のブレーキでなんとかする!という考え方でも否定しません。全然OKだと思います。(ダイワのゼロアジャスターセッティングなんかはそれですよね)
回転抵抗をより低くすることへの私の考え方はこうです。
「○○(フィネスじゃないリール)に回転のいいベアリングとオイルチューンしたらより軽いルアーが投げやすくなった!」「飛距離は特に変わってない」ってレビュー見かけますよね。
最近だとKTFのダブルセラミックボールベアリングのレビューでよく見かけたかなと思います。
まさに回転抵抗を下げて得られるのはそういうことなんです。
滑らかな回転になる、回転させるための力がより小さくて済むようになるということは、立ち上がりのための力が小さくなったということです。だから軽いルアーへの適性があがります。
一方で、それが重いルアーならば当然もっと回転させやすくなる…ということは、そのスプールはチューニング前よりもオーバーランしやすくなっているんです。
つまり、軽く立ち上がる回転する側にチューニングした場合、理論的には逆側の「重いもののキャストへの適性」は本質的には下がっているはずなのです。
しかし、多くの場合、前者はどーがんばっても物理的に飛ばないという限界がかなり近くにありますが、後者はキャストの技術、外部ブレーキのセッティング、適切なサミング等によってそのデメリットをカバーすることも可能です。
その結果、その問題は認知されにくいのではないかと思います。
とっちらかったまま結論
だいぶとっちらかってきました。いつものことですけど
回転性能を上げた結果、ブレーキが必要になるということは、本来のバランスが変更された(悪化した)とも考えられます。
例えば
「標準設計のスプールを立ち上げるのに十分なウェイトのルアーしか投げない」
みたいなケース。
こういった場合、性能を維持するメンテナンスを行えば十分で、スプールの回転性能をむやみやたらと上げる事は、必ずしもメリットのあるチューンとはいえない…という事になるのではないでしょうか。
(思ったようなメリットがない・コストベネフィットがよくない)
一方で、例えば「フィネス機をよりフィネスよりにする尖ったチューニングにしたい」とか「30mm中盤〜後半の気に入ったスプールでもう少し下のレンジまでカバーしたい」という、その意図が明確にあって行うならバッチリOKだと思います。
つまり…
「ルアーが引っ張り出せる力に見合わない、強い回転性能があっても、結局飛距離にも安定性にも繋がってない。そこの”おつり”はブレーキで押さえ込む必要があるトラブルメーカー」
「バックラッシュを避けるため、ブレーキシステム全体としてスプールの回転性能のセッティング、ベアリングやオイルにどういう仕事させるかは、そのリールで投げるルアーの重さやロッド、外部ブレーキとのバランス次第。何よりキャスターの技術」
って事かな…と。
最後が自分に刺さって辛い。